札幌家庭裁判所 平成9年(家)764号 審判 1998年1月08日
申立人 小原依子 外2名
相手方 不破有子 外2名
被相続人 反町宅治
被相続人 反町初
主文
1 別紙遺産目録1の(2)ないし(4)の各土地を申立人小原依子、同明石敏子及び同桜庭保子の共有取得(持分各3分の1)とする。
2 その余の別紙遺産目録記載の遺産は全部相手方不破有子、同月島倫子及び反町亘の共有取得(持分各3分の1)とする。
理由
第1 一件記録によれば、以下の事実が認められる。
1 相続人
被相続人反町宅治(以下「父宅治」という。)は、昭和58年8月10日死亡し、配偶者である被相続人反町初(以下「母初」という。)と申立人3名及び相手方3名の合計7名が相続人となったところ、母初も平成7年5月21日に死亡したため、結局、申立人3名及び相手方3名の6名が相続人となった。よって、各相続人の法定相続分はそれぞれ6分の1となる。
2 遺産
(1) 範囲
別紙遺産目録1の(1)ないし(4)記載の各不動産は父宅治の遺産であり、同目録1の(5)の建物(以下単に「マンション」という。)、同目録2の現金、同目録3の(1)ないし(5)記載の各預貯金、同目録4記載の保険金及び同目録5記載の電話加入権は、いずれも母初の遺産である。
なお、同目録2の現金は母初名義の甲銀行の預金を本件相続人全員の同意のもとに、同銀行から払い戻しを受け、同払戻金のうちから金180万3637円を、同1の(5)のマンションの住宅金融公庫に対する残債務の返済に充てた残額である。
(2) 遺産の現況
遺産目録1の(1)土地には、父宅治が、昭和49年10月、近藤他2名に対し、期間60年間の借地権を設定している。その地上には鉄筋コンクリート造りの建物が建っており、同建物の1階及び2階は「○○」の店舗に、3階及び4階は市営住宅として利用されている。その地代は、月額10万7685円であり、母初の死亡後は相手方亘が管理している。
更に、母初は○△都市開発株式会社に対し、昭和61年8月上記(2)の土地の北側部分(305.71平方メートル)に、昭和62年4月その余の(2)の土地分及び(4)の各土地について、それぞれ期間45年間の堅固な建物所有目的の借地権を設定している。同地上には、いまだ建物の建築はなく、現在は駐車場として利用されている。その賃料は月額21万2690円であり、これまた亘が管理保管している。
なお、(3)の土地は上記借地権の設定対象になっているか否か必ずしも明らかでないが、いずれにしても、現状は近隣の人たちの通路として利用されているようであり、遺産としての利用価値ほとんどないものと窺われる。
また、同(5)のマンションは、現在空き室状態で、被相続人初の遺品がそのままの状態になっている。
(3) 遺産の評価
別紙遺産目録1の(1)の土地は4847万8684円、同(2)の土地は4659万3603円、同(3)の土地は0円(本件土地部分は近隣の通路として利用されている現況から、固定資産税等が非課税となっている。)、同(4)の土地は1886万3900円と評価される。
ところで、上記土地は岩見沢市JR○△駅前商店街に位置し、利便性の高い土地であるが、後記のとおり、長期の借地権が設定されている上、調停手続において当事者は上記と同額の平成8年12月現在の固定資産課税評価額による評価を不動産遺産の価格として明らかに反対していないものと認められ、併せて、昨今の不動産市況の冷え込みを考慮すると上記のとおり評価するのが相当であると認める。
また、同1の(5)のマンションはJR△△駅及び札幌市営地下鉄△△駅に近い場所にあり、これまた利便性が高いと認められるが、上記と同様な事情から、金1020万円と評価するのが相当である。
同目録記載の預貯金の合計は989万5069円であり、電話加入権の価格については申立人らは金7万2800円が相当であるとするが、取引相場等に鑑みると5万円と評価するのが相当である。
したがって、現金185万8894円を含む遺産合計は1億3619万0150円となる。
3 具体的相続分
相続人中には、各被相続人から生前贈与を受けた者がいないことについては全当事者の陳述が一致している。また、誰も寄与分を定める申立てもしていない。したがって、法定相続分を修正すべき事情も認められない。
そうすると、本件各相続人の相続分は、前記のとおりの各6分の1となる。
第2 本件遺産の分割
当裁判所は本件に現われた一切の諸事情を総合考慮して、主文のとおり分割した。
上記のとおり分割した理由を若干補足すると、本件に関しては12回にわたる調停を行い、調停委員会から数次にわたって調停案が示されたが、結局合意に至らなかった。当裁判所は調停の経過を踏まえ、本件遺産中の不動産は目録1の(5)のマンションを除き、上記のとおり長期間の賃借権が設定されている上、不動産市況の低迷等の状況下においては、これを換価することは著しく困難であると認められるので換価分割の方法は取り得ないものと判断した。さりとて、本件遺産中の不動産全部を、相続人の1名ないし数名の単独ないし共有取得させ、代償金を提供させてこれを分割する方法も、本件当事者はそうする意思も経済力もないと述べるのでこの方法も取り得ない。更にまた、調停手続中に当事者から提案された各不動産をそれぞれ相続人6人の共有にするという分割方法は、当事者全員が合意あるならば可能な分割方法の一つと言えなくもないが、本件においてはその合意も得られていないので、この分割方法も相当でない。
しかしながら、当裁判所には、本件調停手続における当事者らの主張、資料提出及び分割希望案の提出等の経過からすると、申立人3名は申立人グループとしてそれぞれまとまって行動しているものと認められ、他方、相手方3名もそれぞれ相手方グループとしてまとまりをもって行動をしているものと認められる。そうすると、申立人グループ及び相手方グループはそれぞれ互に協力協調関係がとれているものと認められるので、同一グループ内で遺産を共有取得させても、即座の分割ないし将来の分割に支障が生じるものとは考え難く、また新たな紛争を惹起する可能性もほとんどないものと推察される。したがって、現時点においては、不動産を含む本件遺産を申立人らと相手方らの共有とするのが相当であるものと認め、主文のとおり分割した次第である。
なお、具体的分割については、上記のとおり、本件遺産1の(1)土地には、長期間の借地権が設定されており、その地代として月額10万7685円、年間129万円余りを生み出しており、他方、同(2)ないし(4)の各土地にも建物所有目的の長期間の借地権が設定されており(現在のところ建物は建築されていない。)、その地代として月額21万2690円、年額255万円余りを生み出していることからこれらの土地は容易に換価できず、当面は貸料を収取することで満足するしかないものと認められ、この収取権は残借地権期間、利用状況、不動産市況等の諸事情を勘案すると少なくとも今後10年間は借地関係が継続するものと推認するのが相当である。そうすると上記(2)ないし(4)の土地を取得するグループとその余の(1)の土地を取得するグループの10年間における受取地代総額の差は、おおよそ1260万円余りとなること等の本件に現われた一切の諸事情を総合考慮すると、主文1及び2のとおり分割するのが相当であるものと認めた次第である。
第3 よって、主文のとおり分割の審判をする。
(家事審判官 堀滿美)
別紙
遺産目録
1 不動産
(1) 所在 岩見沢市○○○×丁目
地番 3番2
地目 宅地
地積 357平方メートル17
(2) 所在 岩見沢市○○○×丁目
地番 3番9
地目 宅地
地積 524平方メートル03
(3) 所在 岩見沢市○○○×丁目
地番 3番10
地目 宅地
地積 35平方メートル73
(4) 所在 岩見沢市○○○×丁目
地番 3番11
地目 宅地
地積 190平方メートル66
以上被相続人宅治の遺産
(5) (一棟の建物の表示)
所在 札幌市△○区△○○△×丁目×番地×
建物の番号 ○△△マンションII
(専有部分の建物の表示)
家屋番号 △○○△×丁目×番×の××
建物の番号 ××号
種類 居宅
構造 鉄筋コンクリート造1階建
床面積 4階部分74平方メートル24
(敷地権の表示)
土地の符号 1
所在及び地番 札幌市△○区△○○△×丁目×番×
地目 宅地
地積 2910平方メートル19
敷地権の種類 所有権
敷地権の割合 1万分の160
2 現金 185万8894円
ただし、被相続人初名義の甲銀行△△支店の普通預金259万7038円及び定期預金106万5493円を払戻した上、上記1の(5)マンションの残ローンを住宅金融公庫に返済した残金である。
3 預金
1) 乙銀行△△支店 合計 327万8172円
貯蓄預金(×-×××××××) 277万8172円
定期預金(×-×××××××) 50万円
2) 乙銀行○△支店 合計 427万7832円
普通預金(×××××××) 327万7832円
定期預金(×××××××) 100万円
3) 丙信託銀行○△○支店 合計 139万0895円
貸付信託(×××N×××××) 100万4027円
金銭信託(××-××) 32万2531円
普通預金(No.×××××××) 6万4337円
4) 郵便局 合計 94万8170円
定額貯金(×××××-×××××××) 60万6000円
定額貯金(×××××-×××××××) 20万1000円
通常貯金(×××××-×××××××) 14万1170円
(以上は平成7年5月21日現在である。)
以上預貯金合計 989万5069円
4 保険
J保険 満期返戻金25万円
証券番号 第××××××××××号
保険の種類 積立団地保険
保険期間 平成11年1月30日までの5年間
5 電話加入権
NTT 5万0000円
以上被相続人初の遺産
以上